
一本の線
店主評価★★★★★
日々生活している中で「才能とはこういうものだ」と強烈に感じる瞬間がある。アートの世界で言えば「たった一本の線」にやられる場合が多い。たかが一本の線と思うかもしれないが、「強烈な存在感をもって見る人を圧倒する線」というのは誰にでも引けるものではない。
子供のようないたずら描きに見えるのか「あの絵はチョット理解出来ない」と良く言われるピカソも以前紹介した本でも判るとおり激しく心揺さぶる一本の線を引く。ユルーい感じが魅力のホックニーのドローイングなども真剣の切れ味だ。最小限の行為の中に才能を閉じこめられる人が「天才」なのだろう。
今回紹介するのはアンディー・ウォーホール、キャンベルスープやマリリンモンローなど一般大衆的なモチーフをアートに取り入れ、ポップアートの旗手として有名な彼のポップアート以前の作品を集めた作品集だ。早くから芸術的な才能を見せていた彼は大学で広告芸術を学び、卒業後商業広告に携わる。この経験がポップアートへと繋がっていく。
ウォーホールのポップアート作品というと写真をシルクスクリーンで表現し、そこへペイントやドローイングを施すという手法が有名で、デザイナー出身だけあって一般ウケする作品作りはまさにポップアート(大衆芸術)だ。その手法を使えば誰にでもウォーホール的作品が作れてしまう(あくまでも見かけはだけど)。アートを誰にでも出来るものだと我々に気づかせてくれた功績は大きい。しかしだ、誰にでも出来そうなことをアートにした彼も実は彼しか引くことの出来ない「強烈な存在感をもって見る人を圧倒する線」を描ける人なのだ。
ペンで描かれた靴や花や天使など、どちらかというと商業的な表現ではあるがウ〜ン、と唸ってしまう説得力がある。この本を見てから彼のポップアート作品を見ると、誰にでも出来そうだけどやっぱりこれは彼にしかできないものだと納得出来るはずだ。
絶対音感を持つ人は小鳥のさえずりや木々のざわめきなども音階で聞くことが出来るそうだ。一本の線で才能を現すことの出来る人のペン先にはどんなものが見えているのだろう。
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